1998年 札幌にて
札幌で撮影会社に就職。
その会社での仕事は生まれたばかりの新生児の撮影だった。
生後2〜3日の新生児にも個性があり、顔や泣き声もそれぞれに違う。それは当然のことだけど、ここで働く以前の僕の解釈は実感を伴っていなかった。毎月300名の赤ちゃんを抱いて写真に撮ることで身をもって実感できるようになったと思う。
撮影会社での仕事は充実していたのに、つまらないトラブルでその後1年弱で退社。
僅かな期間で不本意に撮影会社を辞めてしまったことが、自分の中に消化し切れない感情を生み、何かをしなければいけない気持ちになった。
天気のいい日曜日、たくさんの風船とあめ玉を用意して大通り公園に行った。
「風船を持ってもらい写真を撮る。風船を返してもらう替わりにあめ玉をあげる。」
そんなことを朝から陽が沈むまで繰り返しやった。
喜んでポーズをとってくれる女子高生や、怪訝な表情のお年寄り、にっこりとカメラに向かって笑う子ども。
1日で200名程の人たちが撮影に協力してくれた。職業カメラマンとなった今ではもうこの日と同じ気持ちにはなれないけれど、風船を持ってくれたみんなのおかげで今があると思っています。